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アベノミクスって何だ!?

 安倍首相が自慢げに繰り返すアベノミクスの成功。しかし、安倍首相がデフレ脱却を唱えて、今年で7年目。実感としての景気回復などほど遠い。日経の世論調査でも、政府が「戦後最長になった可能性がある」と指摘している現在の景気回復について、78%が「実感していない」と答えています。「実感している」の16%を大きく上回っており、内閣支持層や自民党支持層でも「実感していない」は7割に達し、内閣不支持層では「実感していない」は91%に達しています。

アベノミクスによろしく』明石順平氏「別人の身長を比較して、身長が伸びたと言っているようなもの」~ 2019.1.22の賃金偽装問題・野党合同ヒアリング「毎月勤労統計」の調査が不適切だった問題ついて。明石氏のコメントは4分過ぎからあります。

 今回は厚労省の毎月勤労統計不正で、国会でその事実をデータを持って明らかにした弁護士・明石順平氏の論※を借りて、アベノミクスの失敗を見ていきます。明石氏は弁護士で主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。ブログ「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」管理人。※著書「アベノミクスによろしく」及びブログ「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」を参考。

 今日までそのまともな検証されずアベノミクスは、安倍政権とメディアが一体となって、政府に都合のいい情報が流された感が多分にあります。しかし、明石氏はブログで数年前からアベノミクスがまるで成果をあげていないことを指摘しています。先述したように明石氏は「経済の素人」を自任しています。

 その明石氏がアベノミクスのカラクリを彼なりに分析してみた結果、経済学者の説明を待つまでもなく、これがまったくもって無理筋な政策であることがすぐに理解できたといいます。なぜ日本人の多くがこんなデタラメな政策に、いとも簡単に騙されてしまったのかと驚いたと、明石氏は語ります。

アベノミクスで実質賃金が下がり続ける

 アベノミクスとは①大胆な金融緩和、②機動的な公共投資、③構造改革の3本の柱からなる安倍政権の金看板といってもいい経済政策だが、その最大の特徴は①の金融政策ににあります。景気が良くなると物価が上がるという理論に基づき、人為的に物価をあげれば景気がよくなるという仮説を立てた上で、大胆な金融緩和によって円安を引き起こすことで物価上昇を実現すれば、経済成長が実現できるとするリフレ派の経済理論に基づいています。

 安倍政権と日銀が目指した前年比2%の物価上昇は6年経った今も実現しなかったが、とはいえ実際には物価は確実に上昇してきた。例えば2013年から3年間だけでも物価は4.8%上昇し、そのうち2%分は消費税増税に起因するもの、2.8%は円安に起因するものだったといいます。(2014年、消費税5%→8%増税

 しかし、その間、景気は一向によくならず、GDPの6割を占める消費が、まったく上向かず、その理由は根本の賃金が上がらないから当然です。

 アベノミクスのデタラメさは、名目賃金から物価上昇分を割り引いた実質賃金が、安倍政権発足後コンスタントに下がっていることにさえ気づけば、誰にもわかることだった。「なぜ誰もそれを指摘しなかったのか不思議でならない」と明石氏は言います。

 実際、実質賃金が下がり続けた結果、経済の大黒柱である民間の消費支出も下がり続けた。その間、支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は上昇の一途を辿りました。アベノミクスによって国民生活は苦しくなる一方だったことが、難しい計算などしなくても、ネット上から入手が可能な公表データだけで簡単に説明がつきました。

ここまでやる安倍政権のGDPの異常な伸び突出

 しかも、アベノミクスには、最近になって露呈した統計偽装を彷彿とさせる巧妙なカラクリが、いくつも仕込まれていたと明石氏は言う。

 例えば、政府統計では安倍政権発足後、日本のGDPは着実に上昇していることになっています。しかし、実際は2016年末に政府は、「国際基準に準拠する」という理由でGDPの算定方法を変更し、その際に過去のGDPを1994年まで遡って計算し直していました。その結果、どういうわけか安倍政権発足後のGDP値だけが大きく上方修正されるという不可解な修正が行われていたといいます。

 もともと「2008SNA」というGDPを算出する国際的な新基準は、これまでGDPに算入されていなかった研究開発費をGDPに含めるというもので、結果的に各年度のGDP値は概ね20兆円ほど上昇する効果を持つ。しかし、2016年に安倍政権が行った再計算では、これとは別に「その他」という項目が新たに加えられており、「その他」だけで安倍政権発足後、毎年5~6兆円のGDPが「かさ上げ」されていたと明石氏は指摘します。しかも、出版社を通じて「その他」の内訳の公表を内閣府に求めたところ、「様々な項目があり、内訳はない」という回答があったといいます。「その他」項目では、安倍政権発足前が毎年3~4兆円程度下方修正され、安倍政権発足後は毎年5~6兆円上方修正されていたことから、安倍政権発足以降のGDPのかさ上げ額は平均で10兆円にものぼると明石氏は指摘します。

日銀ETF買い入れ、GPIF年金投入で株価操作

 もう一つの重要なカラクリは、アベノミクスが株価と為替レートについて、「恐らく意図的に」(明石氏)、見栄えを良くする施策を実施してきたことだ。経済は複雑で多くの国民が日々、経済ニュースを追いかけているわけではないが、どういうわけか円・ドルの為替レートと日経平均株価だけは、NHKの5分ニュースでも毎日必ずといっていいほど、しかも一日に何度も報じられる。多くの国民がこの2つの指標を、世の中の景気を推し量る目安にするのも無理からぬことだと言います。

 ところが安倍政権の下では、この2つの指標が公的な強い力によって買い支えられ、つり上げられてきました。日銀はETF(指数連動型上場投資信託受益権)の買い入れ額を大幅に増やしてきました。さらに、年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は国内株式への投資割合を安倍政権発足後、倍以上に増額しています。要は日銀や政府の公的機関が、数兆円単位で東京市場の株価を買い支えてきたということです。

 先述の通り、為替については、かつて見たこともないような大規模な金融緩和による円安誘導が続いています。

 日々のニュースで、為替は1ドル110円以上の円安が、日経平均は史上最高値の更新が続いていることを日常的に聞かされ続けています。明石氏はそこに、一般国民にわかりやすい経済指標、つまり円・ドル為替と株価だけはしっかりと手当をする安倍政権の政治的意図があったのではないかと推察せざるを得ません。

アベノミクスのデマと安倍政権で進む民主主義破壊

 実際、2012年12月の選挙でアベノミクスを旗印に選挙に勝利して政権を奪還した安倍政権は、それ以来6回の国政選挙のすべてで、「アベノミクスの信を問う」ことで、ことごとく勝利を収めてきました。そしてその間、安倍政権は特定秘密保護法や安保法制、共謀罪等々、過去のどの政権も成し遂げられなかった政策(個人の自由や集団的自衛権容認)をことごとく実現してきました。しかし、実際の選挙ではそうした重要な社会政策は常にアベノミクスの後ろに隠されてきました。過去6年にわたり日本の政治はアベノミクスという呪文に騙されてきた結果が、戦後の日本のあり方を根幹から変える一連の重要な政策という形でわれわれに跳ね返ってきています。

 また、無理筋な経済政策で幻想を振りまいてきたアベノミクスの副作用や後遺症も、次第に深刻の度合いを増しています。そろそろわれわれも目を覚まさないと、未来に大きな禍根を残すことになりかねないのではないでしょうか。(文章元:マル激トーク・オン・ディマンド 第937回の紹介記事

 先に結論を述べました。アベノミクスの実態を知ることで、安倍政権の欺瞞体質が一目瞭然でわかります。消費増税原発再稼働、米国従属外交、沖縄基地加重負担・辺野古新基地建設、9条改憲と海外で戦争ができる自衛隊への変質。どれひとつとっても国民には不利益で不要なものばかり。国民が求める政策は、社会保障、雇用景気対策子育て支援、中等・高等教育無償化など切実で生活に直結するものばかりです。社会の基盤を支える政策は後回しにされています。

 目の前で繰り替えされる沖縄の切実な民意の無視、国会軽視の強権的な政治運営は、立憲主義、民主主義の破壊そのものです。さらに無理筋のアベノミクスによる日銀の異次元の金融緩和の長期化で、何かのきっかけで円・株価暴落、国債暴落……近い将来のパニックの恐れも高い確率で危惧されます。繰り返しになりますが、そのツケは国民生活に跳ね返ってきています。

 以下は明石氏の論と客観的データに依りながら、アベノミクスのウソで塗り固められた実態を暴いて行きます。しかも皮肉にもそのウソが、政府発表のデータで裏付けられというものです。政府が統計データ不正を行うことは、真実が国民に全く知らされないという危険な社会の招来を許すことになります。

 アベノミクスのウソ:物価の伸びが実質賃金を上回る

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データ元:総務省統計局、厚労省毎月勤労統計調査

 増税アベノミクスで無理やり物価を上げる一方、賃金の伸びがそれに全然追いついていない。実質賃金は大きく落ち込んでいる。2014年に物価が大きく上がったのは、消費税の増税に円安が加わったから。2015年までの間に、物価は4.8ポイント上昇。日銀の試算によると3%の増税による物価押上げ効果は2%と言われおり、4.8ポイントのうち、2.8ポイントは増税以外の要因と考えられ、それは円安以外に考えられない。円安は輸入物価の上昇をもたらすので、物価を押し上げる。アベノミクス前は1ドル80円程度だったものが、2015年に120円を超すレベルに。その後、2016年にいったん円高になったので,2016年は前年に比べ物価が0.1ポイント落ちています。そして、2017年からまた上昇に。これは,また円安になったことに加え、原油高が影響。原油は燃料だけでなく様々な商品の原材料になるので、その動向は物価に大きく影響する。 

 日銀がいつまでも物価目標を達成できないので,多くの人が「物価が上がっていない」と勘違いしている。日銀の目標は「前年比2%の物価上昇」つまり毎年2%ずつ物価を上げていくこと。アベノミクス開始時点から2%」ではない。しかも、この物価目標は増税の影響を除くとされている。

 アベノミクス開始時から,増税の影響も含めると,2018年の時点で6.6%も物価は上がっている。その間、名目賃金は2018年時点でアベノミクス開始前と比較して2.8%しか上がっていない。増税アベノミクス(円安)で無理やり物価を上げる一方、賃金上昇がそれに全然追い付かないのが実態だ。

アベノミクスのウソ:急上昇するエンゲル係数、家計は苦しい

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データ元:総務省統計局

 この急激な物価上昇がエンゲル係数(家族の総支出のうち、食物のための支出が占める割合。係数が高いほど生活水準は低い)の急上昇にもつながっている。食料価格指数はアベノミクス前と比べると2018年の時点で10.3ポイントも上がっている。増税が全て食料価格に転化されて3ポイント寄与したとしても、7.3ポイントの上昇の最も大きな要因は円安によるもの。増税と円安の影響で食料価格が上昇した一方で,賃金が上がらないため,エンゲル係数が急上昇したのである。

アベノミクスのウソ:国内消費停滞、一方でGDPかさ上げ疑惑

f:id:rainbowsanda170422:20190326212703j:plainデータ元:内閣府

 増税アベノミクスによる円安誘導は物価上昇と、実質賃金の低下をもたらした。これにより日本のGDPの約6割を占める実質民間最終消費支出(国内消費の合計)が、これまでにない停滞を引き起こしている。見てのとおり、2014年~2016年にかけて、3年連続で落ちている。これは戦後初の現象。2017年はプラスに転じたが、4年も前の2013年より下。この「4年前より下回る」という現象も戦後初。2009年のリーマンショックで実質民間最終消費支出は大きく落ち込んだが、基本的に右肩上がり。

 増税アベノミクスで戦後最悪の消費停滞が生じているのだ。実質賃金、実質可処分所得、実質実収入が減り、その影響で実質消費は停滞し、アベノミクス前より上がったのはエンゲル係数。国民アベノミクス前より確実に苦しい生活を強いられている。安倍首相は悪夢の民主党時代(この表現自体も首相の無知と突如興奮するエキセントリックな人格がなせるものだが)とか言ったそうだが,悪夢は今。

  これほど国内消費が停滞しているのだから,名目賃金が伸びないのも当たり前。国内消費に頼る企業は儲かっていないのだから。円安による為替効果で輸出大企業は儲かるだろうが,それ以外の企業は特に恩恵を受けない。むしろ原材料費の高騰などで、相当苦しい状況に立たされている企業は多いだろう。さらに、この数字ですら思いっきりかさ上げされた結果なのである。

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データ元:内閣府

  2016年12月にGDPは改定されたが,改訂前後の名目民間最終消費支出の差額を示したのが上記のグラフ。いくら新基準になったとは言え、アベノミクス以降が突出している。これまでの検証で国民の所得は伸びていない。だったらGDPアベノミクスで急に増えるはずがない。特に2015年が異常。8.2兆円ものかさ上げ。

 なお、名目民間最終消費支出におけるかさ上げは,国際的GDP算出基準(2008SNA)とは全く関係ない「その他」という部分でなされているアベノミクス以降は大きくかさ上げしているのに、なぜか90年代は全部マイナス。この「その他」によるかさ上げ・かさ下げ現象を明石氏は「ソノタノミクス」と呼んでいる。

アベノミクスのウソ:医療・福祉雇用増で総雇用者所得が増えただけ

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データ元:総務省統計局
 国会で安倍首相が吹聴している総雇用者所得は増えているいうウソについても触れて置かなければならない。何せ官僚からレクチャーされた「アベノミクス成果」に飛びついて、何の疑いもなく自慢したいキャラには閉口するが、ウソはウソと国民に知らせなければならない。
 安倍首相の論法は1人当たりの実質賃金は減っているが、総額なら増えているというものである。
これは確かにそのとおりで,雇用者数が増えているから。だが問題はそれがアベノミクスのおかげ?ということである。

 上記の表は職種別の増加雇用者数。これは2018年の職種別雇用者数からアベノミクス前である2012年の職種別雇用者数を引いたもの。

 医療・福祉が2位以下を大きく引き離してぶっちぎりの1位。125万人も増えている。これは明らかに高齢者の増大が影響しているので、アベノミクスと全く無関係。2位の卸売・小売も円安によって恩恵を受けるわけではないし、原材料費の高騰や記録的な消費低迷からするとむしろ不利益を被っている側なので、アベノミクスと無関係。3位の宿泊業・飲食業について、宿泊は円安による外国人旅行客の増加で恩恵を受けるかもしれないが、飲食は原材料費高騰や消費低迷の影響を大きく受けるので、アベノミクスとは無関係。4位の製造業はアベノミクスの影響といってよいもの。5位以下は基本的に国内需要に頼るものばかりなのでこれもアベノミクスとは無関係。

 既述したようにアベノミクスは金融緩和で「円の価値を落とした」だけ。これと因果関係(円安で得するか否か)が無ければ「アベノミクスのおかげで雇用が増えた」とは到底言えない。だから安倍首相の言は、常に都合の言い数字、文脈の切り取りでプロパガンダするから質が悪い。「増えた雇用の内訳」を見ると、アベノミクスと全然関係ないことが良く分かるのである。

アベノミクスのウソ:失業率低下はアベノミクス前からのトレンド

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データ元:総務省統計局

 ここでも安倍首相のウソが分かる。アベノミクスで失業率が下がったと、これまた得意げに宣伝する。2008年のリーマンショックからマスで見る限り、徐々に雇用の改善がアベノミクス前から始まっており、トレンドとして定着している。高齢化が雇用改善の主因であり、アベノミクスは関係ない。またいいとこ取りのつまみ食いだ。

アベノミクスのウソ:求人数増もアベノミクス前からのトレンド

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データ元:厚生労働省

 安倍首相の自慢する有効求人倍率についても見ていく。これも失業率と同じくアベノミクス前から有効求職者数の減少が始まり、他方で有効求人数が増加し続けているためで、有効求人倍率(有効求人数÷有効求職者数)は増加し続けている。アベノミクス前からのトレンドでアベノミクス成果ではない。ここまでいくとほとんど詐欺の感すらする。国民を舐めきっている証拠で、批判力のない新聞、テレビ、ラジオで毎日これらの偽情報を刷り込まれると、真実と思い込んでしまう人も多い事だろう。

アベノミクスのウソ:就業者増の主役は働かざるを得ない65歳以上f:id:rainbowsanda170422:20190329082524j:plain

データ元:総務省統計局

 さらに年齢層の就業者が増えたのか見てみよう。このグラフは年齢別の就業者について、2018年の数字から2012年の数字を差し引いて算出したもの。安倍首相がいう就業者数が増えたの中身は、働かざるを得ない高齢者が増えたという事が分かる。

 65歳以上の増加が圧倒的だ。266万人も増えている。年金だけでは生活していけないということなのだろう。死ぬまで働けということなのだろう。新羅万障を司るとバカな表現しかできない安倍首相は、官邸ぐるみの忖度ヨイショに踊らされて、全能感に浸っているのか。国民の貧困化へのイマジネーションは当然、働かないだろう。

アベノミクスのウソ:18年実質賃金大半がマイナスの舞台裏

 国会で追及された毎月勤労統計の経緯から。毎月勤労統計不正では、厚労省が東京都の500人以上の事業所について、本来全数調査すべきところを3分の1程度しか調査していなかったことが問題発覚のきっかけ。しかし、実はもっと重大な問題がその裏に隠されている。2018年1月から賃金の算出方向が変更され、従来よりも2000円程度高くでるようになった(主にベンチマーク更新のため)。高くなった要因は①サンプルの半分入替②ベンチマーク更新③3倍補正である。ベンチマークとは最新の経済産業構造調査に基づく労働者数推計の基準で、これをもって賃金を算出するもので係数のようなものと思えばよいらしい。この更新の影響が大半を占めている。そして、③の3倍補正というのは,約3分の1しか抽出していなかった調査結果を3倍して復元する操作のこと。これを2018年1月からこっそり行っていたことが最近判明した。そして、厚労省は2017年以前も3倍補正をして修正値を公表した。経済センサスをもとに、産業構造の変化を反映させるというのが「ベンチマーク更新」(2018年毎月勤労統計は2016年経済センサス調査を使用)である。毎月勤労統計調査はサンプル調査であり、全事業所に対して実施しているものではない。経済センサスは全数調査であり、常用労働者数については正確な数がこれで分かる。そこで、全数調査の結果を基準(ベンチマーク)にして、サンプル調査で得られた数字を修正している。

 しかし①のサンプルが半分違う点と、②のベンチマークが違う点はそのままである。本来遡及改定すべきだが厚労省はそれをせず、算出方法の異なる2018年と2017年のデータを「そのまま」比較し、「公表値」として発表しているのである。本来あり得ないことだ。

 この「算出方法の違うデータをそのまま比較している」ことがおかしいと、明石氏は2018年の9月10日付のブログで指摘している。では厚労省がネットで公開しているのサンプル半分入れ替えとベンチマーク更新の説明を見てみよう。※赤字のアドレスに①と②の変更について「毎月勤労統計におけるローテーション・サンプリング(部分入替え方式)の導入に伴う対応について」の表題で説明のPDFがある。  https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-rotation-sampling.pdf 

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上記の説明は厚労省のPDFにあるベンチマーク変更の解説。内容は旧サンプルと新サンプルを比較すると、差が2,086円も新サンプルで高くなる。そのうち、部分入れ替えによるものが295円。ベンチマークの更新によるものが1,791円である。

 問題は、遡及改定していないので、平成29年までの賃金は旧ベンチマークのまま。新しいベンチマークを採用している平成30(2018)年の数字とは、当然大きな差が出ることになる。明石氏が行ったこの指摘は重要で、このカラクリが分からないと、短絡的に世間はアベノミクスで賃金が上がっていると勘違いしてしまう。実際、昨年のメディアはこぞって6月の賃金上昇を大きく報道した。

 グラフで見ると異常値があきらか。これによって平成30年の賃金の伸び率は当然高く出る。それ以前の3年間と比較すると一目瞭然。これまで説明してきたように、実質賃金も民間最終消費支出も増えていない。エンゲル係数も上昇。GDPもかさ上げ。周辺データがこの状態で、毎月勤労統計だけが伸びるはずがない。

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 しかし、名目賃金よりも物価上昇率を差し引いた実質賃金こそ働くものにとって意味がある。2018年と2017年でサンプル企業が半分入れ替わっているものの、残り半分は共通している。そこで、厚労省はその共通事業所同士を比較した賃金の伸び率を「参考値」として公表している。だからこちらが賃金の実態を表している。そして、総務省の統計委員会もこの参考値の方を重視せよと言っている。実質賃金は出せる。以下が明石氏の計算結果。

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 上記グラフのオレンジの色は厚労省が1月22日に発表した実質賃金の公表値(ブルーは同じ事業所比較のもの、正しい結果が示されている)。18年1月から半分サンプルが変更されており、サンプルの違う17年と単純に比較できないものを敢えて行って出したものだ。同じ事業所で比較した参考値こそ、賃金の伸び率の実態がわかるが、安倍政権は難癖をつけて何としても発表したくないらしい。以下はその記事。

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極めつけはこのグラフ。実質可処分所得の推移で国民の生活が犠牲にされている!

醜い忖度政治横行、厚労省は正確な統計手法を放棄

 厚生労働省が中規模事業所に対する毎月勤労統計の調査方法を2018年1月に変更した際、最新の経済産業構造調査(経済センサス)の結果を過去のデータにさかのぼって反映させる補正を総務省の承認を得ず、独断で取り止めていました。

 毎月勤労統計をめぐっては、18年1月から厚労省が不正調査の「補正」をひそかに始めた他に、調査対象事業所を「総入れ替え方式」から「部分入れ替え方式」に変更し、最新の経済産業構造調査に基づく労働者数推計の基準(ベンチマーク)の更新が行われていました。調査対象事業所の入れ替えや労働者数推計の基準の更新は、それ以前の統計データとの間に「ギャップ(かい離)」を生じさせることから、これまで過去にさかのぼってデータを補正する処理(「遡及(そきゅう)改定」)を加えていましたが、厚労省は18年1月から、遡及改定を中止。このため、賃金伸び率が18年1月から急激に上振れしたことが明らかになっています。データ補正の変更は統計を管轄する総務省の承認が必要ですが、その手続きも無視しています。

 全ては官邸の言いなりで、ウソでもいいからアベノミクスの成功のデータを作れという、あり得ない腐敗がこの政権では蔓延しています。真実などこの政権では重要ではありません。国民を騙す詐欺を公然と行っています。

 アベノミクス6年で国民生活は良くなったでしょうか。平成の失われた30年は、日本社会の対立と分断、経済の停滞、雇用不安、貧困化を一層深めています。安倍政権による政治の劣化は、社会全体の規範を奪い、不条理で扇情的な言動が大手を振るい、真実を見えなくしています。

 このまま安倍政治を続けさせてはなりません。選挙で安倍政権NO!の意志表示こそ、誰もができる政治参加です。政治は国民のもので、何よりそのひとり一人が尊重され、大切にされなければなりません。

 もう一度問います、このまま安倍政治が続いて日本はよくなりますか?

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