市民と野党をつなぐ三田の会ー虹の会さんだ

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安倍政権とは何者か

 こんな酷い安倍政権がなぜ倒れないのだろう?どうしてそこそこの高い支持率が出るのだろ?そんな疑問に答えてくれそうな一冊の本を見つけました。以下の文章はこの本の抜粋です。

●本のタイトル

《「社会を変えよう」といわれたら》

●著者

木下ちがや 

●出版社 

大月書店

 

 

 

 

 

 

引き裂かれていく二つの顔

 「安倍政権はこんなに酷いことをやっているのに、どうして倒れないんだろう」。この疑問は誰しも一度ならず頭をよぎったことでしょう。

 安倍政権が沖縄の辺野古新基地建設を強行したとき、森友・加計疑惑で安倍首相の関与の疑いが国会で追及されたとき、官僚のスキャンダルや暴言が相次いだとき、私たちが見聞きしたことのないような醜悪な事態を目の当たりにしたときのこの「なぜ?」という問いは、市民、マスコミ、官僚、与党にも同じような疑問が浮かんでいました。

 誰がみても安倍首相は嘘をついている。どの世論調査も森友・加計スキャンダルに対する安倍首相の対応はおかしいと思う人は7割から8割いる。昼のワイドショーに出演する御用コメンテーターすらかばいきれない。

 みんなおかしいと思っている。でも安倍政権は倒れない。なぜかという問いは、安倍政権を支持するしないにかかわらず多くの人が今も抱いています。

 この「酷いのに倒れない」という問いに対して、6年以上にわたる安倍政権を振り返り観察することで浮かんでくる答えはたったひとつ。「酷いから倒れない」あるいは「酷くなればなるほど倒れない」というものです。

 安倍政権以前には「政権というものは2年程度で変わるもの」という日本政治の「常識」がありました。自民党の新陳代謝のメカニズム(政権を短期間で切り替えて人事を刷新することで、幅広くポストを割り振り、党の新陳代謝を促していく)で、「酷い政権は倒れるものだ」ということで、この「常識」は機能していました。まさに第2次安倍政権はこの「常識」を覆すことを使命に登場しました。この政権の6年余りはその支配の「非常識さ」と国民的な「常識」がぶつかり合うことで生じた、安倍政権の分裂した姿を見て行きましょう。

退位の式典で「願って已みません」が読めなくて「願っていません」と読むこの国の最高権力者、安倍晋三。因みにこの権力者は事前の挨拶文に目を通すことすらしていないなのだろう。ついでに余計な事かも知れないが、読み方ひとつにしてもまるで知性を感じない。総理候補は血統が支配する自民党のお粗末は、極まっている感がします。既にこの動画は官邸の動画からは削除されています。

 カナダのトルドー首相に日本をチャイナと間違えられて(しかも二度も)、訳もわからず握手を求める安倍晋三

▶与党議員の支配と不支持

 安倍政権ほど、与党の自民党公明党の議員を徹底的に支配した政権はありません。安倍政権下では、国会の議事運営スケジュールは官邸が決定し、一方的な指揮・命令で議会を動かすという手法が常態化しました。このような手法に異議を唱える自民党議員には徹底した圧力が加えられ、服従させるのが安倍政権のやり口です。

 公明党も安倍政権に完全に屈服しています。公明党教育基本法改正から始まり、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪の成立に次々と賛成していきます。20年間近く連立を組み、小選挙区自民党を応援し、比例区で自民票をもらう構図では、もはや「非常識」な政権であろうと離脱する選択肢はありません。

 しかし、安倍政権の圧力支配の一方で、自民党員や公明党創価学会員に支持されていないというのも事実です。2018年の総裁選で石破氏に地方票の45%を獲得されています。「選挙で勝ってるからまあいい」という消極的な支持が、安倍政権を支えています。

▶若者の高支持率と低投票率

 「若者の保守化」は本当か。安倍政権ほど、「若者の自民党支持が高い」という主張が2017年の総選挙以降幅を利かせています。この主張の欺瞞性を政治学者の菅原琢氏が2017年の総選挙の出口調査から明らかにしています。つまり20代、30代の投票率は極めて低い中で、自民党に投票した若者が相対的に多いだけのことで、投票にいかない若者層を含めた場合、むしろどの世代よりも自民党支持が低い結果になっています。

▶支持率安定と抗議活動の活性化

 安倍政権は長期にわたり4割以上の支持率を維持しています。しかし、この政権ほど市民の直接的な抗議にさらされて続けていることも事実です。安保法制、特定秘密保護法共謀罪など「悪法」が登場するたびに官邸前や国会前は数万の市民が結集し、抗議の声を上げ続けています。さらにリベラルなメディア(既存の大手メディアではない有料動画配信や寄付で運営する独立系メディア)はこうした市民の抗議の積極的に報じ、街頭行動とSNS、メディアがスクラムを組んで世論にアピールするという、かつてない運動シーンが生まれています。

 片や街頭行動とSNS、リベラルメディアのスクラムに追い詰められた安倍首相は、政権支持の極右メディアにのみに登場で、国民に呼びかけるをほとんどしていません。世論の反発を恐れる所以と自身の対話能力の欠如で、今や引きこもり状態です。

憲法改正の悲願と改憲反対の世論

 安倍政権ほど憲法改正を正面から掲げた政権はありませんでした。しかし、安倍首相が誤魔化しの改憲を叫べば叫ぶほど国民的関心は低下し、逆に改憲反対の世論が大きく広がる結果となっています。

 2017年5月3日の憲法記念日に安倍首相は読売新聞と日本会議の集会で「2020年のオリンピックにあわせて憲法9条に自衛隊を明記する」と驚きの発表をしました。しかし世論は「今の憲法を評価する」が大勢を占め、「憲法9条を守ったほうがいい」は近年では最高値の世論調査結果が出ています。ついでに朝日新聞2018年5月2日の世論調査では「安倍政権のもとで憲法改正を実現すること」に「反対」58%、「賛成」は30%。「自衛隊の存在を明記する憲法改正案」に対しては「反対」53%、「賛成」は39%。安倍改憲はウソで改憲目的を誤魔化し、それが危険である事を国民は肌身で感じており、護憲の意識は深く国民の精神に根付いています。

よくできた動画です。一見の価値ありです。

「非常識」な支配

 安倍政権は、与党を厳格に従属させ、異端者を徹底的に監視・排除し、「代わりがいない」「変わらない」姿を見せつけることで安定的な支配を確立するという、戦後政治の「常識」から外れた統治」手法を用いています。どんな酷い大臣のスキャンダルでも辞任させない。麻生、菅、二階といった幹部の人事は一切動かさない。どんなに批判がある法案の審議でも会期延長は許さない。安倍の後継者は育てない。このように「代わりがいない」「変わらない」という「負のイメージ」を徹底して国民に示すことで無関心と無力感を蔓延させ、対立軸を隠蔽し、各種選挙での投票率を引き下げながら組織票で勝利し、政権を維持しています。

 このような統治手法は大きな代償を伴うことになります。与党は新陳代謝ができず、活力を失います。官邸にいいなりの議員と党員の隔たりは酷くなり、「ポスト安倍」を生み出す力は失われます。かくして「酷いから倒れない」という体制が強化されるという具合です。二階がいみじくも言った安倍の四選の可能性、「余人をもって代えがたい」はまさにこの負のスパイラルが強烈に組織内で働いていることを示すものです。 

「政治改革」がもたらした支配の条件

  今わたしたちが目の当たりにしているのは、安倍政権による民主主義の瓦解していく有様です。1996年から導入された小選挙区制は、比較第一党(現状は自民党)に4割程度の得票で6割以上の議席を与えるという欠陥があり、1人区でその弊害は顕著です。選挙区候補も公認権と選挙資金が党執行部が握ることになり、党内から総理を目指す本来の競争が困難になり、「血統」で党内の序列が決められるようになりました。その結果、2000年代に入り森内閣以降の自民党の総理大臣ならびにその候補は全員「政治家二世あるいは三世」ということになっています。政治家個人のキャリアや能力は重要視されず、「中央集権的な血統支配の政党」に変質してしまっています。

 この安倍自民党の中央集権化の行くつく先は、「官邸主導体制」の確立でした。官邸が全てを決定するということは、政権交代(与党内および野党による)を封じ込め、自民党政権を永続化させることが目的でした。さらに第二次安倍政権では「内閣人事局」が設定され、官邸が官僚の人事をも一手に握る体制も確立しました。

安倍政権の疑惑やスキャンダルの特異性

 ご存知の小学校建設をめぐり極右活動家への破格の安値での国有地払い下げの「森友疑惑」。獣医学部新設を巡る国家戦略特区認定での土地や補助金の便宜供与が行われた「加計学園疑惑」。この疑惑の特異性はズバリ首相と妻の思想と友人関係から発生したもので、私服を肥やす金権がらみではないところにあります。事件の経緯を見れば明らかに首相は嘘をついている事が濃厚ですが、退陣する事態にはなってない。何故なら先程来述べてきたように確立した安倍政権の支配のもとで、首相を守るために政官あげて「忖度」が行われ、嘘がバレることを阻止しました。「忖度」とはまさに、人事の生殺与奪権を握る首相官邸に「誰が一番忠誠を尽くしているか」を競うもので、政治の劣化振りを示す最たるものです。

 ここで特記して置かなければならないのは、政権は安倍シンパといわれる官僚を首相秘書官に据え、絶大な権力を行使させていることです。安倍政権は「経産省内閣」と言われますが、その経産省出身の今井尚哉(たかや)内閣総理大臣秘書官が、北方領土をめぐるロシア外交、対中国外交、消費税増税で本来の官庁から主導権を奪いとる事態にまでになっています。

憲法ファシズム条項が危機にさらされている

 非常識な支配を徹底する安倍政権下では各官庁からの内部告発や情報リークが相次いでいます。これは各官庁からの反発ですが、個人の地位をかけたそれらの行為は自ずと限界がありますし、安倍政権は明らかに開き直っています。しかし、もっと根っこの所で危険な憲法を実質無力化する政治状況が作り出されていることを、私たちは知らなければなりません。

 宮内庁(第1章・象徴天皇制)、防衛省(第9条・戦争放棄)、文科省(26条・教育の機会均等)からの告発は俯瞰して見ると憲法ファシズム条項が危機に晒されていること意味します。つまり、天皇を政治権力から排除し、軍備を排し、教育勅語を否定するという、天皇軍国主義を封印するという目的において体系的なものです。戦後日本はこの目的に沿って、文科省教育基本法にもとづき、防衛省自衛隊専守防衛にもとづき、退位された明仁天皇象徴天皇制にもとづく天皇像の確立に努めました。

 大事なことは憲法9条だけではなく、安倍政権では明文改憲によらない憲法の「原点と目的」の切り崩しが進行しているということです。

アベノミクス」という支配の技法

 夏の参院選(衆参同一かも)では、安倍首相の口から何度となく発せられるであろう、念仏化した「アベノミクス」。アベノミクスは統計不正で失敗である事が既に明らかになっています。が、多くの国民は中身も検証される事無く、大手メディアが垂れ流す「アベノミクス」情報に踊らされています。アベノミクスは経済政策ではなく、国民を騙し、批判をそらし政権維持のための支配の道具でしかありません。

 「アベノミクス」は今の経済構造がもたらす危機を、金融緩和と財政出動により当座回避するものです。悪い冗談としか言いようがありませんが、安倍首相は「雇用が安定し、生活が向上している」とその成果を強調します。その根拠を失業率の低さと、有効求人倍率の高さが証明していると言います。その内実は民間サービス部門における非正規の増大に過ぎません。バブル期以来の株高も、日銀や年金という政府資金を投入して株価を高く維持しているだけです。さらにアベノミクスの失敗を誤魔化すために統計不正も行っており、勤労統計不正やGDPのかさ上げなど政府統計の信頼性は完全に失墜しています。

 安倍政権の支配を三つの支配に分けて考察すると、そのデタラメさが鮮明になります。まず「時間の支配」で、未来に危機を先送りすることで、今の政権を維持することに全力をそそぐといくものです。経済成長と特に分配を適切に行うことで計画的に危機を解消しようとする姿勢が見えません。次に「資源の支配」で、予算配分で社会保障費や教育費を抑制し、公共事業や民間投資に集中させ、財界・業界の支持を得て政権を安定させることに使うということです。最後が「空間の支配」で、労働法制改革(働かせ放題)をはじめとする業界寄りの規制緩和とTPP推進でグローバル企業優先の政策実行です。

 安倍政権の政策は外交でも破綻を来しています。トランプ政権に擦り寄る高額米国兵器の爆買いやロシアとの北方領土交渉では四島一括から突然二島返還を言い出しますが、軸の定まらない姿勢を見透かされて、領土が全く返還されない可能制も出てきました。朝鮮半島の和平プロセスからは完全に疎外され、拉致問題解決も全く進んでいません。

 メディアも忖度に汚染されています。しかし市民の安倍晋三改憲はさせないといううねりは確実に大きくなっています。

「新しい政治」をつくるには

 最後に大事なことなので繰り返します。2011年の東日本大震災は「複合震災」がもたらす危機をつきつけ、福島原発事故は日本という国を存亡の危機に直面させました。人口減少、地域コミュニティの衰退と、押し寄せる危機は枚挙にいとまがありません。しかも政治はそれに向き合ってはきませんでした。

 それどころかこの6年にわたる第二次安倍政権は、「戦後民主主義」という国民的な価値観を本格的な危機に陥れています。安倍政権は、このように増殖する危機を解決するどころか、80年代のバブル時代を思わせるような「アベノミクス」、高度経済成長期の上面だけの焼き直しにすぎない「成長戦略」、そして「東京五輪」「大阪万博」と、まるで「平成の次代には繁栄の昭和が来る」かのような幻想を振りまくことで当座をしのごうとしているのです。

 この国の増殖する危機に対して、平成の時代が終わりに近づけば近づくほど地域や街頭や、SNS上で声をあげ、行動する人々が増え、今日までその運動は継続しています。それは原発に対して、改憲に対して、TPPに対して、レイシズムに対して、米軍基地に対してと、実にさまざまな課題に及びます。3.11以後に台頭した社会運動の使命は、これらの危機を主体的に克服していこうとするもので、日本社会の危機を乗り越え、変化に対応する「新しい政治」をつくりあげることにありました。それは安倍政権に対決するだけでなく、いま日本が抱える問題や危機を先送りさせず、「いま、ここで」その解決を迫るというものでした。

 社会運動が掲げる課題はさまざまにありますが、その基調にあるものは「公正で差別のない社会をつくること、アジアと世界の人々の友好を図ること」であり、そこに結集する人々の「つながり」や「姿」は、未来のあるべき日本の社会の姿を映し出しています。

 安倍政権の立ち位置は明白です。理不尽な支配の論理で、国民に抗う事を諦めさせ、無関心を助長させ政権を維持するその手法に、正義はありません。政治の私物化が一層進む現状に対し、政治を国民の手に取り戻すためには、目前の参院選は重要です。時代を巻き戻し、国民を国家の統制・支配のもとに置こうとする民主主義、立憲主義の破壊者に、これ以上政権の座に居座らせてはなりません。

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