市民と野党をつなぐ三田の会ー虹の会さんだ

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改憲の理由は、根拠希薄で情緒論ばかり

 のっけから恐縮ですが、これは第一安倍政権で政権を放棄した直後の安倍氏憲法改正の持論を述べる動画です。BS11制作で番組名は「未来ビジョン 元気出せ!ニッポン!」の2011年9月3日の日付けがあります。〈*いわゆる安倍応援勢力です。既にこの番組は終了しています。〉全編に安倍氏の軽薄さが露骨に出ています。この手の勢力の動画公開の意図に反して、現在権力の座にある安倍首相という人格に、決して憲法改正をさせてはならないと思える、最上級の判断材料だと言えます。

 改憲の理由は以下3点、❶GHQ押し付け❷古い❸自主憲法制定ですが、わざわざ分類するほどでも無し。特に❶に付いてはGHQが勝手に作ったという一方的な解釈に基づいており、主張は極めて雑ぱくです。❷については、それがどうしたと言いたくなる理由です。個別の内容にも以下のように言及しています。

 動画中では9条の2項削除(戦力不保持と交戦権否認)を明確に言っています。ですから安倍首相が現在言っている2項そのままの本音は、いずれきっぱり削除ということになるのでしょう。ウソを付くのはこの人格の常ですから。

 「集団的自衛権」も行使できるようにすると、はっきりと述べています。その主張もちゃちなケンカの例えで正当化しており、米国の戦争に加担し、海外での武力行使自衛隊員を危険に晒すリスクなど一切コメントなしで、隊員は命をかけるの…くだりで同情論の喚起。さらに最大の問題の「緊急事態条項」創設も東日本大震災を例にその必要性を説いていますが、民主主義を破壊し、基本的人権を奪い、戦争ができる国にする安倍独裁の企みは隠したままの狡猾さは健在です。

 歴史認識(彼らがいう自虐史観)も時の権力者が押し付けてはならないと言いながら、安倍政権の露骨な教育行政介入やメディアへの圧力が堂々と行われているのが現実です。日本の侵略戦争を美化する歴史修正主義がまかり通っています。

 北朝鮮拉致問題も喋っていますが、9条があるから北朝鮮に対して、拉致被害者を取り戻せない主旨のことも唐突に述べています。全員救出と言った安倍首相本人が何もしてこなかったことの方が、問題だと思うのですが。政権維持のために北朝鮮問題を利用して国民を欺いているのは安倍首相自身です。

 このインタビューで許せないのは、憲法の前文を例に出して、現憲法は他国に平和と安全をお願いしているとして「いじましい」と笑いながら説明。度しがたい軽薄な人格です。

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文化の日が明治の日に変える狙いは、国家主義への回帰

 政府は明治改元から150年となる10月23日に「明治150年記念式典」を開催しています。安倍首相は式辞で「明治の人々が勇気と英断、たゆまぬ努力、奮闘によって、世界に向けて大きく胸を開き、新しい時代の扉を開けた」などと述べ、手放しで明治時代を賞賛し、負の側面(朝鮮半島の植民地化し、中国、アジア太平洋にと戦争を遂行)には全く触れていません。明治に国の成立の規範を求める一方的で異常な歴史観は、敗戦で苦難を知られながら平和憲法のもと、国民が現在の社会を築いたことを無視しており、馬鹿げています。

 公然と安倍首相が異常な歴史観を述べる背景には、改憲右翼団体日本会議」などの極右勢力によって安倍政権が構成され、支えられていることがあります。「明治150年記念式典」には天皇、皇后両陛下は出席しておらず、共産党自由党社民党も同様です。

 150年式典から日を開けずして、29日には「文化の日」を「明治の日」にしようとする右派勢力の「明治の日推進協議会」(祝日改正を狙い、主張は明治時代を振り返ることを通じて国民としてなすべきことを考える契機にすべきとするもの)が、マスコミ排除で衆議院第二議員会館で集会を行っています。出席者は稲田朋美氏、杉田水脈氏、衛藤晟一氏、赤池誠章氏らの極右・安倍ヨイショの議員に、日本会議の看板・桜井よしこ氏ら。国会で聖徳太子を持ち出し、失笑を買った稲田氏は、以前のこの団体の会議で以下の様に述べています。

神武天皇の偉業に立ち戻り、日本のよき伝統を守りながら改革を進めるというのが明治維新の精神だった。その精神を取り戻すべく、心を一つに頑張りたい」と。古事記や日本書記に出てくる人物ですが、その存在さえも疑わしいものを持ち出す神経は、何をか言わんやです。

 明治は大日本帝国憲法のもと、国民は臣民であり、天皇への絶対的服従が課せられた時代であり、国民主権基本的人権が保障されているわけではなく、国家が主体で国民は支配の対象でしかありません。その時代を礼賛する安倍首相と極右支持勢力が目論むのは戦前回帰の国家主義の体制です。バカな誇大妄想ですが、権力主体が安倍政権である限り、少しも油断できません。

▲既に内閣官房「明治150年」関連施策推進室が旗振り役で、明治時代の美化が行われています。

同調圧力が蔓延する危険な内向き日本

 今日の日本社会に度々出てくる「国益を損なう」という言葉は、何か相手を非難する時に使われる訳ですが、そこには強い同調圧力が働きます。一方で非難される側の少数派や異質なものの排除が進んでいます。安倍政権下で極右の政治家たちが多用した言葉はネット社会で拡散し、今や現実の日常まで侵食してきています。

 武装勢力から解放された安田純平さんへの残念な理由なきバッシング、自己責任、謝罪の大合唱は、内向きな同調圧力の強い日本社会の危険さの象徴です。今やメディアがその同調圧力の世論醸成に加担しており、「政治的な話題は口にしない」という空気を世の中に作り出しています。この傾向は繰り返されることで、意識に刷り込まれ、安倍政権の思惑通りの一部世論の右傾化を増長させています。

 様々な場面で国益とか、国家とか、ナショナリズムと言う言葉が溢れ、教育や報道というパブリックなものまで国側の論理に今や組み込まれています。裏でこっそり行われてきたそのプロセスは、安倍政権になって非常にあからさまです。さらにこの風潮に対して、国民の側にも政権側の危険な論理に追随する層が明らかに増大(特にネット社会)しており、国民間の対立を煽ることにも繋がっています。

今、日本にとって憲法改正が最優先課題か

 トップで述べた安倍氏改憲インタビューで、日本のビジョンをアジアに、世界に示すことが大事だと述べていますが、中身は9条ほかの憲法改正で軍隊を堂々と持ち、戦争ができる国にすること。米国が勝手に行った戦争に集団的自衛権のもと、その戦争に加担することなどを挙げ、そのために押し付けではない自主憲法制定こそがビジョンだと言っています。さらにそれが決まり文句の「戦後レジームからの脱却」に繋がると述べています。

 安倍氏の言うものはビジョンでも何でもなく、アジアや世界に対して「軍隊を持っていつでも戦争をするぞ!」と宣言しているだけで、侵略し被害を受けたアジア諸国には脅威でしかありません。アジアや世界が直面する課題解決や将来像を提示してこそ、ビジョンと言えるもので、安倍氏の理屈は過去に逆戻りする〝戦前回帰の国家主義〟でしかなく、政治が今なすべき事とは到底思えません。

 日本の少子高齢化の課題は深刻です。時間的猶予はそれ程ないはずです。単純な拡大成長論は答えにはならず、低成長の前提で持続可能な社会のあり方を政治がリーダーシップをとって社会に問いかけて行くべで。ですが、目前の安倍政権は国民疲弊を進めることに邁進する戦後最悪の政権です。データの裏付けの通り、日本社会は分断化と貧困の増大で深く傷ついています。自慢のアベノミクスの成果は庶民には無関係。円安、見せかけの実態なき官製相場の株高は、大企業と富裕層にのみ恩恵があるだけで、歪な日銀依存の株価維持や大量の国債購入は、価格下落で経済破綻のリスクを抱えており、破綻すれば最大の被害者は庶民です。

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出典:2016年6月3日赤旗より

 以下、長い引用になりますが、元駐日英国大使のヒュー・コルタッチ氏のJapan Timesの2016年2月1日の記事を掲載します。時世と一致しない内容がありますが、論旨は的を射ています。日本語訳文は内田樹の研究室より。

安倍の優先順位間違い。ヒュー・コルタッチ

安倍首相は日本をもういちど「普通の国」にしたいと繰り返し発言している。しかし、海外の日本観察者たちは別に日本を異常な国だとは見なしていない。すべての国は固有の歴史と伝統を持っており、過去に起きたことを抹消することも改変することもできないのである。

これまでも多くの指導者たちが歴史を書き換えようと企てて来た。しかし、その歴史的事実の解釈は、ひとにぎりの追随者たちを生み出すことはできても、長期的には失敗を宿命づけられた。擁護者たちがどう言い繕おうと、ヨセフ・スターリン毛沢東のような邪悪な専制者の犯した罪は記録から抹消することはできないのである。

英国の奴隷貿易への関与はわが国の歴史の汚点である。後世の英国人が貿易を停止しようと努力したことは汚れをいくぶんかは落としたが、汚れを完全に消すことはできなかった。

日本を「普通の国」にするために安倍は戦後できた憲法を改定することが必要だと考えている。彼が九条の改訂だけで満足するつもりなのか、それとも他の条項、例えば天皇の地位についての変更まで試みるつもりなのかは、まだわからない。いずれにせよ「平和」憲法の改定は論争の的となるであろう。とりわけ時代遅れの神話や人権の軽視を含意する動きは激烈な反対を引き起こすはずである。

もし絶好のタイミングで選挙を行い、公明党の後援を得ることができれば、安倍は国民投票の発議に必要な国会議員の3分の2を達成する可能性がある。しかし、改憲についての国民的な支援を得られるであろうか?

英国人であるわれわれは国民投票というのがかなりの程度まで偶然に左右されるものであり、現代民主制を不安定にしかねない要素であることを知っている。
スコットランド独立をめぐる国民投票では、連合派の楽観とスコットランドナショナリストに対する大衆的支援の高まりによってあやうく独立派が勝つところだった。
国民投票は問題を解決しない。デヴィッド・キャメロン首相が不幸にも約束した国民投票も、英国のEU加盟という問題に恒久的な解決をもたらすことはないだろう。

日本における改憲についての国民投票はつよい情動的反応を引き起こすはずである。デモやカウンターデモが繰り返され、それが市民たちの衝突と社会不安を結果する可能性が高い。日本経済はそれによって影響をこうむり、国民は疲弊するだろう。アジアにおける安定的で平和なデモクラシーの国という日本のイメージが傷つけられることは避けられない。

改憲に対する中国と韓国の反応は敵対的なものになるだろう。日本の中国への投資はその影響を受けるし、対日貿易は悪化し、在留日本人の生活は脅かされることになる。
日本における改憲が実は何を意味するのかについては、アジア諸国でも、ヨーロッパでも、北米でも、問いが提起されるだろう。特にそれが日本のナショナリズムと領土回復主義のよみがえりではないかという不安は広まり、この不安は日本の歴史修正主義によってさらに強化されることになる。

安倍はこのような現実的なリスクに直面しながらも、なお改憲を押し進めることが最優先の課題だと本気で信じているのだろうか? 憲法文言の変更が彼の抱いている日本のヴィジョンにとって死活的に重要だということなのだろうか? 現在の日本が直面しているはるかに重要な課題が他にはないということなのだろうか?

彼の掲げた「三本の矢」にもかかわらず、経済は依然としてデフレと停滞から浮かび上がることができずにいる。経済の再構築と最活性化こそが第一の政治課題でなければならない。

日本は人口問題の危機に直面している。人口は高齢化し、かつ減少している。労働人口比率のこの減少は日本の成長と将来の繁栄にとって深刻な問題である。人口減から生じる経済社会的脅威をどう抑制するか、そのことの方が、瑕疵があると批判されてはいるけれど、現に70年近くにわたって日本の繁栄に資してきた憲法の条文をいじり回すことよりもはるかに重要なことではないのか。

2016年には日本が直面しなければならない大きな政治課題がいくつもある。
中国経済は年初から好材料がない。中国政府が経済を成長軌道に再び載せる手だてを持っているのかどうかはまったく不透明である。習近平主席は汚職摘発と分離派への弾圧を同時的に行っている。中国政府はこのような時期に日本から仮想的ではあれ脅威がもたらされるということになれば、それを利用して、国内のナショナリズムを煽り、中国の国内問題から国民の目を逸らそうとするだろう。

2016年はアメリカ大統領選挙の年である。日本政府はこれまで伝統的に共和党びいきであった。それは貿易問題において共和党の方がより信頼できたからである。しかし、もし共和党の大統領候補が予備選挙で勝ち、ポピュリストの支援を得て次期大統領になったら、かつてマイク・マンスフィールドが絶賛した日米関係はどうなるか?
トランプ大統領あるいはクルーズ大統領の思想はすべての海外のアメリカ観察者に激震を走らせるに違いない。日本政府の移民政策などはドナルド・トランプのそれに比べればはるかにリベラルである。そんなことより日本にとって重要なのは、トランプは日本が日本防衛に要するアメリカの全コストを負担することを要求している点である。トランプ大統領の命令下にアメリカチームが要求してくるこれらのコストをめぐる交渉の困難さに比べれば、普天間基地問題などものの数ではない。

英国もヨーロッパも過激な共和党大統領候補者のうちの誰かが指名を獲得し大統領になった場合に起こる諸問題に今から頭を悩ませている。しかし、他国だって苦しいのだということは日本にとっての慰めにはならない。とりあえず、英国は「憲法」改定問題というようなことに心を煩わせることがない。明文憲法がないのだから当然である。英国の「憲法」は議会によって何世紀にもわたって積み上げられてきた法律と先行事例の蓄積のことである。

日本はなぜ今そんなことのために時間と努力を浪費するのか? なぜ日本はこれほど多くの問題を抱えているにもかかわらず、それを後回しにするというリスクを冒すのか? 安倍は想像上の過去の中に暮らしているのだろうか? 
日本は英国と同じように、21世紀の世界の中で、その国力の漸減という状況と折り合ってゆかなければならないのである。
たしかに日本は今ならまだ世界に対して何ごとかをなしうる余力がある。けれども、その影響力と人口を絶えず失い続けているという事実を直視しなければならない。

セント・アンドリュー大学卒。1946年来日。1980年から1984年まで駐日英国大使を務めた。日本アジア協会の代表(1982–1983)、ロンドン日本協会の代表(1985–95)も務め、数多くの日英関係と日本の歴史に関する本を執筆している。ジャパンタイムズに度々投稿している。2018年8月13日(94歳没)

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